ー 互いの存在を補いあう、在るものとその「うしろ」について ー 

 

目の前に何かがあり、それを見るとき。何かを認識して、それを考えるとき。その何かを形づくる輪郭はまわりの空間、周囲の背景との変化やぶつかりや差異によって生みだされていることを、我々はあまり意識しません。

そしてこれは、目に見える色や明るさの違いによって存在の輪郭を定めることだけに留まらず、より広く普遍的な根拠だと捉えています。 あるものが存在することは、そのまわりの環境や世界との相互の関係によって成り立ち、それは全てのものが互いがそこに存在することを補い合っていることだと考えています。 

そこから、在るものの背景やまわりの世界を「うしろ」と捉え、制作のきっかけとしています。 うしろの存在を考えるイメージをつくりだすこと。図像や画面の中で、背景となっているものを空間/意味の上でうしろに位置させたまま、絵の主題にさせる試みが自分の制作です。 

 

制作では、「うしろ」を絵画面上で主題とする為の装置のような役割として、画面外の存在を想起させるような " 影 " や、映像制作の領域で背景(うしろ)を生み出す為に用いられる " グリー ンバックスクリーン " をモチーフにしています。 

 

絵画面の中のイメージによってテーマを提示する制作と並行し、絵画の物体としての側面と、その成立、制作過程に目を向けそれら絵画作品が内包するうしろをメタ視点的に作品とする試みもしています。 

’Structure’ は、自身の制作である具象絵画の持っている性質や成り立っている構造に対して、改めて目を向けそこから思考するものを基に制作しています。 木枠やパネル、麻布や綿布といった基底材を暴く様に提示したり、画面上に始めにパレットをつくり出し、そこに絵具をチューブから絞り出して画面の中で混色し、画面の中のイメージを描いていきます。 絵具はパレットに絞られた状態ではマテリアル(物質)の側面を強く感じさせますが、それらが人や風景といったイメージ(図像)の認識に上回る変質の過程は、具象絵画の最も核となる特性のひとつだと考えます。